この度2019年2月26日、日本の国際協力・まちづくりNGOの野毛坂グローカルは、バンコクの北40kmに位置する人口3万人のタイ・パトムタニ県ブンイトー市(Bueng Yitho Municiparity)が設立予定である高齢者ディケアセンターに対する技術協力をタマサート大学と協力して協力することで合意しました。
このような自治体が設立する本格的なデイケアセンターはタイではじめてになります。

ブンイトー市 (Bueng Yitho Municipality Office)

Moo 11 Rangsit – Nakhon Nayok Rd., Tambon Bang Yitho, Amphoe Thanyaburi,  Pathum Thani 12130
เลขที่ 1 หมู่ 1 ซอยรังสิต-นครนายก 70 ต.บึงยี่โถ อ.ธัญบุรี จ.ปทุมธานี 12130 โทร : 0 2991 6636-8

地図:https://goo.gl/maps/wbccqxuXE2y

 

タイでは、社会保障制度が未熟ななか急速な高齢化がすすみ、タイの地方自治体にはその対応が求められています。

タイの各自治体では、国家医療保険庁(National Health Security Office:NHSO)の予算を活用した在宅要介護者向け訪問介護システムの構築、高齢者の介護予防や健康増進を目的とした高齢者センターの設立などを行っています。一方で地域における高齢者のリハビリテーションなど医療サービスに関しては、通常は現状では自治体は取り組んでおらず、保健省のタンボン健康増進病院(ヘルスセンター)が担っていますが、殆どのタンボン健康増進病院では医師や理学療法士が常駐してないのが現状です。そのなか、地域において医療と福祉(高齢者ケア)の統合サービスを実施する試みがタイでありますが、いちはやく同市では医師や理学療法士の常駐する公立診療所を設立して医療・リハビリ・福祉・介護の統合サービスの実施を目指してきました。

今回、同市では大都市ではなく(タイに数多くある)小規模な自治体としてはタイではじめて本格的なディケアセンターを設立します。同ディケアセンターでは、在宅の高齢者に対してリハビリテーションの実施、高齢者の生活の質を向上するための活動や健康増進介護予防、認知症の高齢者の居場所などの役割を果たします。

しかし同市には設立に関する十分なノウハウが無いことから、野毛坂グローカルが全面的に協力を行います。

資料:
ブンイトー市の人口:32321名 (ただしタイでは住民登録をしていない地方出身者がおり実質人口約10万人)
高齢化率:32321人中、60歳以上の高齢者(タイでは統計上通常60歳以上を高齢者と扱う、国際的には通常は65歳以上)4256人で13%
なお、これはだいたいタイの平均的な高齢化率といえます。日本の(65歳以上の)高齢化率(平成29年で27.7%)と比べると低い数値ですが、タイの課題はその高齢化の速度が日本以上に早いことです。
つまり徐々に高齢化がすすめばそれにあわせて社会の制度などの整備ができるが、タイでは日本以上の速度で高齢化がすすむため今後急速に高齢社会への対応が必要になります。・
この取り組みが画期的な理由

次の2つの点で画期的です。
1.タイの(バンコクやチェンマイといった大都市の自治体ではなく)ごく普通の自治体が医療・リハビリテーションまで含め、自治体が福祉・医療の統合サービスを実施すること(その具体的な形として高齢者デイケアセンターを設立すること) それにより、タイ全土に展開可能なモデルとなりうること。
2.認知症デイケアサービスを実施すること
補足説明をすると下記の図の真ん中にあるように、タイでは自治体が老人福祉センター運営などの福祉を担い、保健省(Ministry of Public Health)が実質的に医療・保健・および高齢者介護を担っています。 日本の介護保険に相当するものとして訪問介護制度を自治体が運営していますが、ほぼすべての自治体で国からの補助金が自治体の口座を通過するだけであり、実質上の運営は保健省の末端機関であるコミュニティ病院(ほぼ郡に一箇所)やタンボン健康増進病院(ヘルスセンター)が担っているのが現状です。
一方で、地方分権化の流れのなか、上記「自治体で国からの補助金が自治体の口座を通過する」にあるように現行の政策としては将来的には自治体が主体となることが期待されています。
なお、タイでは政策として、高齢者に関しては「健康増進・介護予防」が重要施策であり、介護に関しては地域や家庭の力を活用した在宅介護の促進が図られています。在宅介護を行ううえで重要な施策が、上記の「訪問介護」と「ディサービス・デイケアセンター」があります。(その2つにより、在宅介護を実現する)
そのため、各地で高齢者デイケアセンターの設立がなされていますが、その殆どが国の機関(保健省や大学)が直接行うものであった  り、保健省の機関(病院や大学病院)から人が派遣されて行うものであり、病院に近い、大学病院に近いなどの条件で成立するもので、特定の場所では良い試みもありますが、組織体制としては汎用性がなく、タイ全土に広がりをもちようがないシステムです。
自治体には(ごくごく一部の自治体をのぞき)医師、理学療法士などがおらず、国の機関からの派遣で行っており、運営の主体性も自治体になく、福祉との整合性がはかりにくくなっています。
ブンイトー市では、いちはやくブンイトー市立病院を設立し(前回最初に行った病院)、保健省や大学はあくまで助言を行うだけで、ブンイトー市が医療・リハビリ・介護を統合的に行うモデル(下記の図の一番右側)の実現をめざすものです。
これにより、(病院や大学病院が近くにない)他の自治体でもモデルになりうるものとなります。
また、ブンイトー市は、「このモデルはタイ最先端のものである、この試みの結果をタイ政府に提案して、タイ全土に広げる」との意気込みを目指しています。