タイ国社会開発人間安全保障省障害局を訪問した様子がタイ政府のウェブサイトに掲載されていました。
浜松医科大学の高杉先生とごいっしょして、タイのインクルーシブ防災についてのヒアリングを行いました。
サランパット局長以下幹部の方々が丁寧に対応いただきました。
今回の出張ではインクルーシブ防災に関して、政府(社会開発人間安全保障省)、大学(タマサート大学福祉学部)、自治体(ラヨン県タップマー市、パトムタニ県ブンイトー市、チョンブリ県パタヤ市)、NPO、被災住民らにヒアリングを行いました。
ラヨン県タップマー市の事例を簡単に報告します。
2022年9月、野毛坂グローカルらが取り組む「タイの自治体ネットワークによる地域に根ざした高齢者ケアプロジェクト」の自治体のひとつであるラヨン県タップマー市は、大洪水に見舞われました。
この洪水により、市域の半数以上が被災しましたが、人的被害(死傷者)はゼロでした。
なぜタップマー市がこのように被害を抑えることができたのかについて、市の関係者から聞き取りをしたところ、主に2つの理由があることが分かりました。
ひとつめは、障害者や高齢者などの要援護者の内訳が、洪水が起こる前からコミュニティ内の繋がりや活動を通しておおよそ把握されており、それらの情報をもとに防災計画が毎年作成されていたこと。
内務省、保健省、社会開発人間安全保障省、県などと、災害(洪水含む)が起こることを予見した事前の準備、実際に被災した際の対応、そして復旧への取り組みを、タップマー市が中心となって取りまとめ、各機関の調整が速やかに、効果的に進められたこと。
また、具体的な施策として、段ボールベッドが民間企業からの寄付をもとに用意されたり、ショッピングセンターを無償で借りることで緊急時の「災害支援センター」が運営されたりするなど、市の民間セクターとの協力・協働をもとに、素早い判断で大洪水発生後の対応を行い、人的被害をゼロに食い止めました。
タップマー市において、自治体を中心としたコミュニティのちからを基に行われてきた、要介護者を含む「誰もが」災害発生時に取り残されないためのインクルーシブな防災活動・計画の内容と経験は、タイの他自治体にとってもその事例から学び、各々の活動に反映していける余地が大いにあると言えるでしょう。