タイ・スタディツアー説明会・報告会のお知らせ
野毛坂グローカルでは、”政策レベルからコミュニティの現場まで”幅広く学ぶことを目的としたスタディツアーを、年に2回程度実施しています。
政府機関や国連機関、メディア、企業など多様な分野を訪問し、医療・保健・福祉、環境、多文化共生といった社会課題について、実践的に学ぶことができます。
少人数制で、現地のリアルな課題に深く関わることができるのが特徴です。
また、国際協力の経験が豊富なスタッフが同行するため、充実した学びが得られます。
さらに、比較的安価に参加できる点も魅力のひとつです。
▼スタディツアーの詳細(次回は2025年9月上旬に実施予定)
https://nogezaka-glocal.com/study/
今回は「協力隊まつり」の一環として、スタディツアーの説明会・報告会を開催します。
ツアーに参加した学生の報告を通じてタイについて学びたい方、将来的にスタディツアーに参加を検討している方など、どなたでもご参加いただけます。ぜひお気軽にお越しください。
▼協力隊まつりについて
https://pea02245.wixsite.com/jica
■ 日時・会場
- 日時:4月20日(土)15:00〜16:30
- 会場:JICA市ヶ谷ビル(
JICA本部とは異なります)
〒162-0846 東京都新宿区市谷本村町10-5 - 部屋:6階 600号室
- 参加料:無料
- 事前申込不要
(席には余裕がありますが、事前に下記から申し込みいただくと確実です)
https://forms.gle/gVitskzfbwBYAM619
■プログラム 内容
- スタディツアーの概要説明
- 参加学生によるスタディツアーの内容・感想の発表
- 質疑応答/コメンテーターによるコメント
■ 発表者
- ファシリテーター:沖浦文彦 大阪経済大学教授)
- コメンテーター:久保田悠 神奈川県立保健福祉大学講師
- コメンテーター:尾前未緒 国際協力機構(JICA)
- 発表者:
- 中村美遥(京都大学4年:参加当時)
- 大嶋勘太(青山学院大学2年)
- 宮内正枝(創価大学2年)
参考:前回のスタディツアーのスケジュル
1日目(2月10日(月))
・社会開発人間安全保障省障害局
(Department of Empowerment of Persons with Disabilities, Ministry of Social Development and Human Security)
・国連・アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
・アジア太平洋障害者センター(Asia-Pacific Development Center on Disability: APCD)
・国際協力機構(JICA)タイ事務所
2日目(2月11日(火))
・パトムタニ県ブンイトー市(SMART&STRONGプロジェクト)
3日目(2月12日(水))
・バンコク都プラウェート地区にあるゴミ集積地スラム
・民間企業(東洋ビジネスサービス)
・メディア(NHKアジア総局)
4日目(2月13日(木))
・パタヤ レデンプトリスト障害者技術専門学校
(The Pattaya Redemptorist Technological College for People with Disabilities)
・ラヨン県のコミュニティビジネス(養蜂)
・ラヨン県のカンボジア人コミュニティ
5日目(2月14日(金))
・ラヨン県タップマー市(移民労働者の子どもの就学促進プロジェクト)
6日目(2月15日(土))
・チュラロンコン大学学生との交流会
・博物館などの訪問(ラチャブリ県・サムットソンクラム県)
7日目(2月16日(日))
・移民労働者向け識字教室(Foundation for Rural Youth :FRY)
・マングローブ植林地
【参加報告書】
中村美遥 京都大学4年:当時
このスタディツアーは、これまで自分が深く社会課題や国際協力について、多くの気づきを与えてくれた。本ツアーに参加する前、私はタイ社会がどういった社会課題を抱えているのか、また国際協力という視点から日本はどういった活動を求められているのかについて学びたいと考えていた。実際に参加を終えた今、それらが完全にクリアになったとは言えない。その代わり、課題はとても複雑で、その解決策にも明確な唯一解はないという現実を教えていただき、これから自分が国際協力に関わっていく上での大切な気づきを多くもらったと感じている。本ツアー全体を振り返って特に考えたことは以下の3点である。
1点目は、SDGsの理念でもある「誰一人取り残さない(No one will be left behind.)」の意味についてである。本ツアーに参加前、私はこの言葉について、障害者や移民、LGBTQ+といった様々なカテゴリーでマイノリティとされる方々が包摂された社会を目指しているのだという理解をしており、同時に、現実的な目標とするには曖昧でハードルが高く、綺麗事のように聞こえてしまっている節もあった。しかし、本ツアーを終えた今、このスローガンは、具体的な社会の目標を示すという意味に加えて、人を集団ではなく「個」として捉える姿勢の大切さを示しているのかもしれないと考えている。本ツアーでは移民の子ども、障害者、高齢者など幅広い側面からタイにおけるインクルーシブな社会の実現に向けた先進的な取り組みを見学させていただいた。成功事例を見せていただいたこともあり、見学をする中で私は当初、「こういったプロジェクトがなされているこの地区はインクルーシブな社会が実現されているのだろう」と楽観的な感想を抱いた。しかし、詳しく活動されている方のお話を伺ったり、他の参加者との議論をする中で、その取り組みから取りこぼされた個人の存在に気付かされた。「移民」などのように集団を分類することは、大枠で社会を捉えて施策を打つ中では効率や効果の点で良い場合も多いが、同時にそれだけでは見逃してしまう人々がいる。社会について考える時、大きな主語で捉えすぎず、「個」をできるだけ見逃さないようにしたいと考えさせられた。
また、本ツアーを通して、社会の状況を理解する上で、政策と現場の両方の視点を持つことの重要性をとても感じた。本ツアーでは、タイの社会について政策レベルから地域コミュニティまで、幅広い視点からのお話を伺う機会があった。その中で特に1日目、社会開発人間安全保障省障害局の方から、タイの障害者の権利を守るために様々な制度作り、サービス提供を行っていることを伺い、素直にタイは高齢者インクルージョンに対してとても進んだ国なのだという感想を持った。しかし5日目、パタヤ レデンプトリスト障害者技術専門学校という障害者へ無償の教育を行っている学校でお話を伺う中で、現実と理想の乖離が大きいことを教えていただいた。この学校はインクルーシブな社会実現に向けた素晴らしい理念を持ちながらも、まずは障害者が社会で経済的自立をできるようにといった目の前のステップを重要視しており、就労機会の確保のために障害者だけを集めたコールセンターなどの就労場所の創出をされているなど、一見するとインクルーシブとは逆行したような取組も行っていらっしゃった。障害者インクルーシブにおいて先進事例とされるこの学校においても、多くの妥協をせざるを得ないという状況を目の当たりにし、政策はあくまで理想を示したり大枠を決めるものであって、現実とは大きな乖離があったり、その大枠から外れてしまう人もいるという側面を知り、政策的な視点ばかりでは現実を見落としてしまう可能性があることを学んだ。外部者として他国の社会について知ろうとするときは特に、どうしても政策サイドに視点が寄ってしまうと感じるが、幅広い視点を持つ努力を忘れないでいたいと学ばせていただいた。
3点目は、国際協力のあり方についてである。本ツアーで国際協力のプロジェクトの現場を見せていただく中で、当事者ではない外部の者として社会課題に対して活動をするにおいて、本当に当事者たちがその活動を望んでいる(その活動で幸せになる)のか、持続的に長期間続けていけることなのかという点がとても重要かつ、意外と難しいことなのだと感じさせられた。本ツアーでは、野毛坂グローカルがタイで行っているプロジェクトを2つ見学させていただいたが、その中で大切にされていたことの一つに「当事者主体」というものがあった。特に国際協力という活動の枠組みにおいては、無意識的に自分や自国の価値観で相手を判断し、相手に対して勝手な理想を押し付けてしまったりする可能性があること、そしてそれによって、結果として意図しない形で相手にネガティブな影響を及ぼす可能性があるということを教えていただき、大変考えさせられた。実際自分も、このツアーでタイの社会について勉強させていただく中で、つい日本と比べて不十分に見える部分に注目してしまうことが何度かあった。しかし、そもそもタイが日本と同じような社会を目指していると決めつけてしまったり、自分起点で物事を考えてしまっている姿勢は、活動がたとえ善意に基づいたものであっても、かえってその社会の当事者にネガティブな影響をもたらす可能性があることを学ばせていただいた。
このスタディツアーで過ごした1週間、これまでの自分が知らなかった世界をたくさん見せていただき、社会のことや自分自身のキャリアについて、多くの大切な学びのチャンスをいただいた。このツアーでお会いした全ての方への感謝を心に留めて、学びをこれからに活かしていきたいと強く思う。
宮内正枝 創価大学1年:当時
私は今回のタイスタディーツアーに参加させていただき、一生忘れられない貴重な経験をすることができました。私にとっては初の海外であり、勇気のいる挑戦でしたが、飛び込んでみて良かったと思っています。奥井さんはじめ、訪問を受け入れてくださった全ての皆様、学び合ってくださったメンバーの皆さん本当にありがとうございました。 新しい視点や気づきはもちろん、自身の中にあった思い込みを知ったり、関心を深めることができました。それは、全ての生命の尊厳が守られる平和な世界をつくるにはどうしたらよいのか、自分には何ができるのか考えるきっかけになりました。 今回、私は課題解決に取り組む人々や生活に困難がある人々に直接会いに行くことでしか得られないことを学びました。例えばスラム一つとっても、今までは教科書やニュースからしか情報を得ることができませんでした。しかし、それは発信者の意図のもとに切り取られた情報であり、また、どこか遠い国で起きていることとして捉えてしまいがちです。 実際に訪れてみると、そこは想像よりもはるかに厳しい場所でした。道や家の周りには大量のゴミ、家の作りも壊れてしまいそうで見ているだけで不安になるようでしたが、それは私が暮らす安全な環境と比べているから感じることでした。そこで暮らす人々の表情を見ると、彼ら彼女らにとってはこの環境下で生活することが当たり前なのだと受け入れるしかありませんでした。そこにはミャンマーからの移民も多くいて、男性は隣のゴミ集積場で分別をして働いていました。移民はスラムの外には簡単に出られず、子どもたちは学校に通えていません。最近はあるNPO団体が読み書きや算数を教えにきているそうですが、それもいつ終わるかも分からないと聞き、教育の機会や質が保障されないとはこういうことかと思い知らされました。移民に対する差別、生活することで精一杯な家計の状況、国家の方針や近隣住民からの理解、教育を受ける権利の捉え方、、それぞれの立場によって意見は異なり、見えている世界も異なるのだと知りました。 この現状に対して私は、政治、人権、教育、福祉と専門分野を持つ人々が協力して、それぞれの使命と共通の目標達成のために動くことはできないものかと考えています。スラムに住む人々の問題解決とは、ただ支援者が一方的に労働や教育の機会を与えれば良いことではありません。スラムの人のために動くことが自分たちのためにもなる、社会をよくすることになると納得できなければ力を合わせることは難しいでしょう。まずは、各組織がスラムの人々のために働く理由、その必要性を明確にした上で、共通の理想を持たなければなりません。例えば、国家、行政は人権保護に取り組むことで国際社会からの信頼を得ることができます。また、周辺住民にとっては他文化を持つ人々との共生によって、差異を越えて理解し合うことや他者を尊重することを体験し、互いの心が広く豊かになっていくことでしょう。これはただの理想郷にすぎないかもしれません。しかし、小さなコミュニティだからこそ人同士の距離が近く、心の距離も近くいられる、一人ひとりを思いやって生きる社会をつくることができます。こうした国民の中で互いの理解が進むことは、必ず国家を動かす力になり、政治的な関係改善にも貢献できます。私は、そのような人々の心が信頼と愛で結ばれる社会をつくりたいです。移民に限らず、障がい者や高齢者、多様なジェンダーも、自然と受け入れていく心を持つ人が増えることで、インクルージョンは実現されるのではないでしょうか。さらに、それは人々が生命は全て平等であり尊い存在なのだと自覚することに繋がっていきます。 このことから、私は社会課題解決や平和創造といっても主役は民衆であると思います。国連や国や大企業など大きな影響力を持つものについていくだけでは、きっと世界は変わりません。自分や身近な人が何に苦しんでいるのか、どうしたらそれぞれの力が発揮されていくのか考えること、今の勉強や仕事が誰のためになっていて、見えない誰かの犠牲の上に成り立っていないか考え直すこと、そして今の自分と世界との繋がりを知り、創りたい未来のために何か行動を起こそうとする、そういう世界市民のリーダーを増やしていくことが重要です。世界市民のリーダーは主婦であっても、会社員であっても、学生や会社員でも、誰でもなれるものです。今回多くの場所を訪問して気づきましたが、あの人のために、世界のためにという意識を持って日々過ごしている方々は生き生きとして輝いています。 私はこれから勉強をする中で、今回のスタディーツアーでお会いした方々のお顔を時折思い浮かべ、今も困難に立ち向かいながら生きている人がいることを忘れないようにします。また、彼らは決して助ける対象ではなく、共に生きる、学ばせていただく相手であることを心にとめて、社会課題と向き合っていきたいと思います。最後に、将来力ある人材になるために、今は何かの分野で専門家になることを目指し、徹して学び抜いていきます。
大嶋勘太 青山学院大学1年:当時
この8日間のスタディツアーを通じて、自分が将来何を成し遂げたいのか、現地での学びを通じて具体的に考えられるようになったことを実感している。自分語りの時間や、宿泊施設での会話を通じて、他の参加者の方のバッググラウンドを知り、距離が縮まりまったことも嬉しかった。
1日目のオリエンテーションでは、障がい者支援に関する理論と実践の結びつきを学び、タイのAPCDや社会開発人間安全保障省の活動の話を聞いて、障がい者権利条約やSDGsに基づく支援の先進性を感じた。特に、現地での障がい者の多様なニーズについて理解が深まった。
ミャンマーラーニングセンターやタマサート大学でのLGBTQI+に関する講義を通じて、教育機会の不足や社会的偏見など、現地の社会課題の深刻さを実感した。これにより、国際的な支援や法整備の重要性を強く感じた。
カオプラガム市での高齢者支援の取り組みやHAPPY OLDIEのシステムでは、行政サービスの効率性や持続可能性について考えさせられた。異なる分野の統合によって効果的な支援が可能になるというコンセプトに感心した一方で、将来的な持続性には疑問が残っている。
また、UNDPや社会開発人間安全保障省、横浜銀行バンコク駐在員事務所、日経新聞社アジア支局を訪問し、多様な分野での情報収集ができた。特にビジネスと人権の関係、インフォーマルセクターの問題、メディアのグローバル戦略について理解が深まり、これらの知見は今後の学びや活動に役立つと感じており、自分自身今後とも理解を深めていきたいと感じている。
初めてスラムを訪れた際、格差社会の現実を強烈に感じた。使われている物がどこから来たのか、今後どのように処理されていくのか、ということや衛生面について思いを巡らせ、知見を広める必要性を痛感した。大使館訪問では、タイに関する様々な情報を得ることができ、今後も政治や社会に関心を持ち続ける必要性を感じました。パーソネルコンサルタンツ株式会社での女性の雇用についての話も興味深く、メディアの使命について考えるきっかけとなりました。
シラパコーン大学の学生には丁寧に町を案内していただいた上、インタビューをすることにも協力してくださり、彼らとの交流を通じてタイの学生の実態を、生の名前の声を聞いて知ることができた点で学びになったと思う。
FRYを訪れ、ミャンマーからの移民の就学・就労支援について知ることができた。タイ政府とミャンマー政府の複雑な外交関係が影響を及ぼしていること、教育機会の制限が存在することに気づき、早急な解決が求められると感じた。
マングローブ林では、自然の生態系を観察でき、興味深い経験となった。スタディツアーの一週間は濃厚で、参加者同士の考察や質問が私の視点を広げ、より深い洞察を得る助けとなった。
総じて、このスタディツアーを通じて得た経験は、私にとって大きな価値を持っている。今後の活動に活かし、貴重な時間を頂いてお話を聞かせてもらった訪問先の方々に還元していくことを目指したいと考えている。主催者や参加者の方々への感謝の気持ちを忘れず、ここで生まれた関係を継続していきたいと思う。