タイ初の認知症カフェ実施の背景

 近年、低中所得国のなかでも特に急速な高齢化が進むタイでは、高齢者ケアに関わる制度を整備するとともに、地域ごとの特徴やニーズに根差したコミュニティとしての高齢化への取り組みを活性化させることが重要となっています。今後高齢化に伴い平均寿命も延びていくなかで、認知症を抱える人口の割合も増えていくと予測されており、地域のなかで包括的な認知症予防やケアを行える場の存在が大きな意義を持つといえ、日本の経験をタイに活かすことが期待されます。

日本の経験がタイでの認知症カフェ開始に貢献

 今回ブンイトー市とタマサート大学による認知症カフェが実施される背景には、日本の認知症カフェの事例や経験を伝えるといった、日本の有識者や団体による協力があります。2019年には、日本のNGO野毛坂グローカルの主催で市長や保健部長を含むブンイトー市幹部らが日本での研修を行い、神奈川県横浜市中区に位置する「オレンジカフェけみく」において、実際に認知症カフェを視察しました。また、今年2022年3月には日本の学生の企画・運営協力でオンラインでの認知症カフェ研修が開催され、ブンイトー市からは医師・心理療法士・介護士らが参加するなか、埼玉県狭山市の社会福祉法人狭山公樹会ひろせの杜 松尾博美施設長から「認知症の基礎とケア」について、神奈川県横浜市神奈川区に位置し「ひだまり☆誰でも認知症カフェ」を運営する居宅介護支援事業所ひだまり+の西迫愛主任ケアマネジャーからは「認知症デイケアと認知症カフェ」についての説明がありました。

認知症カフェとは?

認知症になっても住み慣れた地域、自宅で暮らすことを目的として、認知症、当事者や家族が集ったり、相談したりできるインフォーマルなサロンです。
日本では厚生労働省により2015年に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」が制定され、NGOや介護事業者、自治体などにより運営されています。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf